漫画も小説もネットで手軽に読める昨今ではありますが、時には掌に背表紙の重みを感じながら、指先に微かな擦れを感じながら活字を追うのも乙なもの。手から移った「体温」が文章の温もりとうねりを増していく。改めて「本を持つこと」の醍醐味を味わってみませんか?
自称本の虫オバラさん。真面目に一推しの小説をご紹介。
「白い薔薇の淵まで 」中山可穂
後述の松浦理英子作品と並んで語られる「ビアン文芸」の金字塔。中山可穂さんご自身が当事者と公言しているだけあって「百合」でも「エス」でもなく「生身のレズビアン」が刃物を思わせる冷たさと硬さをもって語られていきます。表題の作品は女流作家と凡庸なOLの物語。二人の行く末は是非その目で、指先で。「猫背の王子」「マラケシュ心中」等痛い程切なく、鋭利な線の美しい作品群です。海外まで話が及ぶこともしばしばな中山可穂作品、ベトナム好きの方に「サイゴンタンゴカフェ」一推し。
高校生の頃、友人が「お前向き」と投げてよこした「花伽藍」も確か中山可穂作品だったような…。(アアッばれてた!)
「奇貨」松浦理英子
松浦理英子さんの「ナチュラル・ウーマン」は兎角有名。巷ではレズビアンのバイブルとまで呼ばれているそうな。
作品数はそう多くなく寡作な作家さんですが独自の視点から描かれるセクシャリティの有り様に時折ハッとしたり溜息をつかされたりもします。本作「奇貨」の主人公はレズビアンと同棲する本田(中年男性)。友達もなく女性との交友もない中年男性の視点で語られていく同棲相手とその親友の関わり、その断片に揺り動かされて変容していく本田と同棲相手の関係性…男性とは、女性とは、セクシャリティ模索の新たな切り口、気になりませんか?
「吉原手引草」松井今朝子
高校生時代に出会ってからというもの十年近くオバラさん。の心臓を鷲掴みにして離さない時代小説。
吉原の郭を騒然とさせた「葛城花魁」失踪事件。目元の涼しい二枚目が吉原に生きる江戸町人の語りを頼りににじりにじりと真相を明かして歩きます。
江戸弁の言い回しの妙、粋も甘いも人情次第…骨の髄から日本人でよかったと思わされる作品です。読了後に主人公の正体がうっすら見える。
え、何故ビアン小説の紹介にだって?
…当たり前のように濡場があるからだよ。
「第二の性」シモーヌ・ド・ボーヴォワール
よく喋る愚痴っぽい女性とのお茶の場を連想させる句読点の脈絡のなさ。よく喋ります、サルトルの嫁。言いたい放題だけれど、不仲ではなかったみたい。
男性と女性の性差、それによって生じる女性であることの不利益、はては同性へも生唾を飛ばして「男性とは」「男性から見た女性とは」「女性とは」をしゃべくりセブンします。女性として「よくぞ言ってくれた!」と思う部分と「それはちょっと僻みよ、ボーヴォワール。」と思うところと。…といっても基本の視点は哲学。もっと学問的な視点から「女性性」を突き詰めたい方向け。
「ありふれた風景画」あさのあつこ
十代の心情描写に、三ツ矢サイダーの泡のような「純水仕立て」のキレを感じる一冊。こんな青春、私にもあっ…いや、なかったわ。私の周りに別れを酷く惜しみたくなるような美貌の少女はそうは居なかった。
読了して十年近く経つものの、オレンジピールの様な、甘く苦みを帯びた最後を未だに忘れられません。
十代の「恋」とは「友情」と区別するのが兎角難しい。日に日に変わっていく心に身体に環境に戸惑いながらも今を馳せる女の子たちにお勧め。青春小説を読むなら、コレ。
豊饒の海(三)「暁の寺」三島由紀夫
ここで純文学の登板。青年清顕の死と転生を描いた四部作「豊饒の海」から第三部。
ビアン文学ではありません…が「純文学でレズビアン」となると決まって名前が上がってきます。
一部「春の雪」二部「奔馬」とは打って変わって、始終ねっとりとして体表にまとわりつくような湿度の高さ。なんせ、中盤以降はほぼエロスとエロス。カルビとカルビ、胸焼け必須。
私はサンチュと烏龍茶を熱望する!!
谷崎潤一郎著「卍」然り、男性の描く性的対象としての女性の姿はちょっとばかり胃に来るものがありますが、泥沼にとっぷり浸かってしまいたい気分の夜にはいいのかも。
番外編-ビアンだったらいいのにな
オバラさん。の妄想垂れ流し。(源泉掛け流し。)本の世界はいつだって魅力的な女性で一杯です。
「夜は短し歩けよ乙女」森見登美彦より
鯨飲の歯科衛生士 羽貫さん。
助平親父の叩き方、タダ酒のせしめ方の豪快さたるや、きっと強めの太眉美女。私の中では。
映像化作品は敢えて見ない。女傑の眉が細かったら…と思うと怖くて怖くて。
オトモダチ、否、百鬼夜行のお供に連れ回されたいんじゃあ。あわわわ。
「女生徒」太宰治より
王子さまのいないシンデレラ姫 私。
賢く品の良い女になりたいと背伸びしては足首をしたたかに捻挫し、斜に構えてみるも傾きが過ぎて酔ってしまう…
一生懸命にオトナを取り繕う姿は紛うことなき「少女」です。
あまりにも有名なラスト、「私」が「あたし」に変容し女の狡さが香る瞬間は今でもニヤリとさせられます。
十代の頃に出会いたい、黒髪パッツンの(これは譲れない)女の子。
「舟を編む」三浦しをんより
修行中の女板前 林 香具矢さん。
ちょっと、主人公そこ代わってよ。と本当に口をついて出た位に「良いヒト(小指)」。または昔懐かし「日本の女性」不器用真面目バカ一代の主人公を陰ながらしっかと支える姿(しかも、やはり、どうしても、美女)に胸が熱くなります。
頼むよ、私だって目を充血させたいし肌をつやつやさせたいんじゃ。
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メモメモメモメモ!!!!!
よしよし!映画もリストアップされてたし、オラじわじわ勉強すっぞ!