長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。ようやく最終回です。ですがこれで最終回にするために、今回はいつもよりも長めです(笑)。どうぞお時間のある時に読んでください。
それは、とある飲みの席でした。
酔ってご機嫌になっている私のもとに、一人の女性が近づいてきました。彼女は小皿に食べ物を取ってきてくれて、それを私に差し出しながら、すっと隣に座りました。
「ずっと素敵だなぁって思ってたんです。」
「それはありがとうございます。」←酔ってるから動揺のない私。
「急にごめんなさい。でも今日は気持ちを伝えようと思ってきました。」
彼女がマジメな顔でひそひそと話すものだから、私はようやく状況を理解しました。
「あの…たぶんきっとレイコさん(仮名)のアンテナは間違ってないと思うのですが、ここでは話しづらいので、終わってからどこかで話すってことで、いいですか?」
「はい。よかった。やっぱりそうですよね。」
やっぱりそう(ビアン)ですよねって、人生で初めて言われましたー。
その後、飲み会がお開きになって、私たちは別のお店に移動しました。
緊張してすっかり酔いがさめてしまった私。彼女の話をちゃんと聞いてみたところ、
●今まで女性を好きになることが多かったけど、付き合ったのは男性だけ。
●身近にビアンもバイもいなかったので、実際はよくわからない。
●やっぱり女性と付き合うのはリスクがあると思っている。親の期待を思うと結婚しなきゃとも思う。
●今日はただ気持ちを伝えたかっただけ。
というようなことを言っていました。
「私はビアンです。正解です。でも私にはいま彼氏がいます。結婚しようと思ってます。」
とりあえず、必要な情報を一息に伝えました。
「はい。…あ、そうなんですか。そうなんですね。正直ですね。」
「うん、ちゃんと話します。それを聞いてどう思いましたか? 冷静になりましたか?」
「付き合ってほしいと思いました。」
え、びっくり。
「でも、結婚はやっぱりしたほうがいいというか、結婚を邪魔するようなことは私にはできません。…とても複雑です。」
レイコさんは、同じように人生の迷いの中にいる女性でした。
「私はもう女性とは付き合わないって決めたんです。結婚してビアンは封印するって。」
「迷惑はかけませんから、お酒に付き合ってもらうのはいいですか? もっと話を聞いてみたいんです。」
確かこんな流れでした。
そして私たちは時々飲みに行く関係になりました。
割り切ったはずが、1年半ぶりに女性を意識したことがきっかけで、私のビアンタイマーはどうにもこうにもピコピコ落ち着かない。このままでは恋愛スイッチがオンになってしまう。そう思った私は、
↓ 第4話の ↓
「私はイチローに勝負をかけることにしました。」に至ったのです。
気持ちを押し殺しすぎだということはわかってました。だけど、皆さんもわかりますよね? ビアンが結婚するというのはそれほどのことです。
人生の喜びの一つを、捨てるとまでは言いませんが、他のもので覆って地面の奥深くに埋めてしまう感覚。
痛くて、つらくて、寂しい。
それでも私が手に入れようとしている結婚て、ホントに何なんでしょう。私がこうして結婚して、一体誰が幸せになるというのでしょうか。よくわからないです。
「イチロー、私、結婚したい」
私は最初で最後の一回きりと決めて、イチローにプロポーズをしました。
「オレもあれから考えてた。今日はそういう話になると思ってた。」
「イチロー、ごめん。 私、今がタイミングなんだ。 変なこと言うけど、今しか結婚したいと思わないかもしれない。」
イチローはしばらく空を見上げて、ぶつぶつ何かを言ってました。言葉を整理していたのだと思います。
「保留っ」
ナニーーー⁈
「ほりゅう」
私の一世一代のプロポーズを受け止めないと言うのです。
「オレは今じゃないな」
プロポーズは断られました。
「わかった。」
ビアンタイマーが限界を告げてます。
気持ちがどんどん深い海に沈んでいく…
タイミングとか持っていき方とか、あまりにも自分本位のプロポーズでした。
「今しかない」のその裏に、私のセクという深い事情が潜んでいたことをイチローは知りません。
イチローを騙して、自分のことも偽って、私は結婚しようとしてるんだなって。そこに幾つもの無理が重なっているということをそのとき一気に思い知りました。
プロポーズ大作戦、失敗。
私とイチローはそれから1か月でお別れをしました。
最終回のつもりだったけど、後日談あります…
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